ぬくもり

あたたかくして寝よう。

Who am I

 

 

 

幼い頃から「しっかりしてる子」とよく言われた。また「大人っぽい子」とも言われた記憶がある。

時間を守る、忘れ物をしない、礼儀正しく接する。自分では当然の行為も、時には周りからの賞賛を攫った。いつのまにか私は、「しっかりしている自分」を隙なく確立していくことに自己の価値を見出すようになった。

 

 

 

生活は単純であった。自分の身の回りのことをこなし、人に言われずとも動いた。すると周囲は私のことをまた「しっかりしているね」「えらいね」と褒め称えた。

私は嬉しかった。

 

けれどもそんな生活は長くは続かなかった。歳をとる度、関係が長く続く度、周囲は私の「しっかり」を当然のものとして扱うようになった。元よりそうなりたかったのだから思惑通りなのだが、何故か少し寂しくなった。しっかりするための私のささやかな努力のような何かが、蔑ろにされているような気がしたからだ。

しっかりとしている私は、取り立てて怒られることはなかったが、褒められる事もなかった。気がついたら、「しっかり」というレッテルが私に取り憑いていた。

「〇〇なら」「〇〇だから大丈夫だね」などと言われると私の心はいっぱいいっぱいになった。しっかりできない私を想像したら耐えられなかった。堕落したら私には何にも、これっぽっちの灰すら残らないから。

 

見事、この十数年で目標とした人間になれたものの、得られたのは自己への疑心のみであった。

 

自分とは何だろう。誰が決めるのだろう。誰のためのものなのだろう。